「私、とても怒っているのです」
にっこり、とそれこそラグナロクの前では見せない柔らかい笑みで姫は言った。ただ口元だけで、目は笑っていなかった。
空になったカップを置き、怒っているという色ない眼差しはラグナロクを見下げる。
座る彼女に、立つ姫がそうなってしまうのは致し方がないが――圧迫感めいたものがあった。
見つめる、内に、びしょ濡れのラグナロクを見て微かに姫が目を細める。今度こそ笑った。ラグナロクが言う、『見て楽しめ』に似合う笑顔で。
「とてもとても怒っています。こんな意味ない無駄に付き合わされて、ね」
「………」
「全部、“ついでの話”なのでしょう。ラグナロク、ねえラグナロク。最初からずっと聞きたいことがあったのです、私。
なぜ、こんな世界に“私”を呼んだのですか」


