『――』
一つの遠吠えで、二人の視線は一匹の敵に移る。
今ので怒らせたのは、暴れ具合、口から出るよだれで分かった。
飢えた獣、目が充血し、歯がむき出しになっている。
ただでさえ、腐敗した首ない部分でおぞましいのに、より恐怖する強面。
人を脅すさいは、人間ではなく大型の獣を仕えとはよく言ったものの。
「仕方がない、今回ばかりは、俺が君に力を貸そう」
「ざけんなっ。今回も、俺がお前をお情けで助けやるよ」
言ってろ、とロードがもう一つの武器を手にとる。タキシードには少々不釣り合いな西洋剣。だが不釣り合いでも、ロードの扱い方はプロ以上。
ロードとて剣士。姫を守るためにいる騎士の一人であり。
「いくぞ、ロード!」
「出遅れるなよ、クロス」
クロスが、唯一認めるライバル。
自分以上に強い奴をクロスは、彼以外に知りはしなかった。


