背中から落ち、それでも止まらず地面を刷りながら後ろに滑った。
「っ、くそ……!」
無傷だろうが痛みがある。腕力――というよりも、怪物相手では純粋に力の差がありすぎる。
いくら倒せると分かっても、倒すまでに自分の力が及ぶかは分からない。
地面に手をつき、すぐさま立ち上がった。
月明かりを受けた深黒の獣。右足からは血が出ているが、ものともしていない。
「こ、の……!」
立ち上がるなりにクロスはかける。
狙うは同じ箇所。ひび割れた柱をなおも叩き、ケルベロスを倒すことに専念しようとした。
『――』
クロスの愚作。
怪物につっこむのは愚かでしかなかった。
接近戦しかできない剣士だからしょうがないかもしれないが、スズメがタカにつっこむことの何が策か。


