ケルベロスの目がクロスに向く。
ふむ、と納得したかのように。
『逃げ仰せるならば追わない。死にたくないならば逃げろ。我を相手にして生き残る者は――たった一人だけだ。
万、億、数え切れぬ人間を相手したが、そなたはどう見ても“億側の人間”だ』
開けられたままの大顎、口の中は自分の身長はあろう牙が綺麗に並べられていた。
喋る犬。人間と違いいちいちパクパクと口を動かさず、ずっと口をあけたままだった。
低い声。二重に聞こえて、頭蓋骨をよく揺らす。
「っ、ざけんじゃねえぞ、くそ犬。獣なんかの情けなんかいらねえ」
『そうか、ならば始めよう。ただ始めるには、我と戦わなければならない理由を提示してもらう』


