彼はただ、己が信じた道を進んでいるだけ。
間違ったことでも、間違いと彼は認めない。
姫のためが絡むなら、どんなことも彼はやってしまうのだろう。
何よりも、あんなことを言われてしまったら。
「信じて、いますよ」
彼が行く道が間違いではないと信じたくなった。
背中越しからした細い声に、クロスの手に力が入った。
剣の柄を腕が切れても離さないと言わんばかりに強く握り。
「始めるぞ、くそ犬」
巨大な大顎を前にしても、彼の強く堅い決心は変わらなかった。
暴れていた犬が、目の前のこじんまりなものを見下ろし止まった。
じぃ、とクロスを見る眼。真っ黒な毛並みがさぁと風に揺れたことで。


