「っ……」
らちがあかないと、姫はガラスケースの外にいるクロスを見た。
「クロス、戦わなくともいいです。下がりなさい」
「………」
これは、姫の計算ミスだった。
声をかけなければ良かった。その声こそが、クロスを後押しする大切な人への想いなのだから。
彼は彼女に背を向けた。
「クロスっ」
青ざめた彼女。でも彼は背を向け進み。
「俺は必ず勝ちますっ!」
ただ一度。
獣の雄叫びよりも大きく勇ましい。
「そうして、帰りましょう。姫が帰りたい俺たちの居場所へ!」
彼の宣言で、姫の声はもうなくなってしまった。
間違ったことをしている。そう言いたいのに、言ったところでクロスは止まらないだろうと確信している。


