「しっかりして下さい!姫なしじゃ俺は……っ。なにか、何かあなたを救う手はないのですか!」
「エリクサーも、ましてや万能薬でさえないのならばもう……、ああ、いや、一つだけありました」
「何ですかっ」
「口づけを」
「……………は?」
「呪いをとくにはやはりそれしかない。さあ、クロス」
「な、ななっ、ま、待って下さい、お、俺が、ひ、姫にそんなこと――いだ!」
どもるクロスの額に、石つぶてが当たった。
思わず支えていた彼女を離し、よろめいたわけだが。
「ふふ、あなたとて私にとって大切ですよ」
クロスの支えなしでもしっかりと立つ姫。話しているようだが、クロスではない。
どこか遠くを見る目。とても楽しそうだ。
「姫……?」
「行きましょうか」
「え、毒とか呪いはっ」
「本気にしたので……ああ、いえ、クロスのおかげで元気になりました」
「俺は何もしていませんよ……」


