「踏みにじるだなんて……。姫は優しいから、俺が傷つくのが嫌だと言ってくれただけで、俺はそれが嬉しいとも――」


喋る唇に、指を置かれた。
もう言わないでという意味がある指は彼女のもの。


「もう無しにしましょう。おひらきです、この話は。私はクロスに好きでいてほしい。私がクロスを好きですから、大切な存在だ。だから、もうやめましょう、こんな話。

両者とも、どれだけ互いを大切かを認識できた。ただそれだけの結果が得られれば十分だ」


クロスに置いた指を離し、姫は離れる。歩いた先にはクロスの剣。両手で重そうに持って、また彼女は戻ってきた。


「これからもそばにいて下さいね。ずっと」


「はい、誓います」


剣を受け取る。
姫から受け取った剣は、とても重く感じられた。


自分がこの剣で守るものの重さ。ああ確かに、さっきのことで再確認をしてしまった。