すぐに彼女の身を案じたクロスは、持っていた剣を鞘に収めずに地に放り投げて、彼女の安否を――
「どこか怪我とか――いっ!」
確認しようとしたら、ウサ耳を掴まれた。
掴まれ、ぐいぐいと乱暴に扱われる。
「いっ、姫いたっ。いたいいたい、いーっ」
動物虐待だ。端から見ればそう言えるほど、ウサ耳を引っ張る姫は乱暴だった。
涙目になるクロス。それを見た姫は手を離し、何故かクロスからそっぽを向いた。
「ひ、姫……一体何を」
「…………」
ウサ耳をさすりながら聞いても、彼女はつーんとこちらに見向きもしなかった。
「あ、あの……姫……」
「約束を破ったあなたと、私は口をききません」
やっと聞けた言葉。トゲがあるようにぎすぎすしていた声は、クロスの精神にダメージを与える。


