憎しみを持って言う。そうして、姫をもう一度だけ見て――いざ、切ろうと。彼女を助けたい一心で。
「ああ、思い出しました!」
パン、と手を叩いた姫で力が抜けた。
言葉に偽りなく、まさにそんな口振りで陽気な声だった。
クロスだけでなく、銃を向けた栂までいぶかしむ。
「どうしたの。時間稼ぎしようが、彼の決意は固まっているよ」
「いえいえ、思い出したことが一つありまして」
くるり、と軽やかに姫は半回転した。後頭部の銃が、額に逆戻り。
男と顔を合わせた姫だったが、顔は普段と変わらない笑顔だ。
「思い出しましたって?」
「言葉通りです。白ウサギさん、そこの彼ではない白ウサギさん。そうして、白ウサギさんが彼女だというあなた。
“彼女が言っていた素敵な彼氏さん”とは、あなたのことでしたかぁ」


