男は、どこまでも“透明”だった。
透いた笑顔。聡明すぎる顔は――道化師のように薄気味悪かった。
笑顔は人を一番に安心させる顔だというのに、安心させる顔で人を絶望させることを吐くのだから。
「クロス……」
彼の決意は固まった。
もう彼女を救うには“これしかない”とクロスは自分の耳を二本まとめてわしづかむ。
剣で一線。痛みで剣を手離さないようにしっかりと掴み、根本部分に刃を添える。
「頑張って、エセウサギ。耳を切ったら次は、足首だ。片足だけでもいいよ。“逃げられなくなった君”を俺がじかに壊したいから」
「………分かった。必ず彼女を逃がせよ」
「約束するよ。俺は君を八つ裂きにできればそれでいい。あ、八つ裂きよりも細切れかな」
「くそ野郎……」


