しかし、手は剣の柄へ。刃をむき出しにして――剣の腹に映る己が顔を見て止まった。
姫のためなら迷いはないが、人間の頭にある防衛本能がそうさせてくれない。
人の心理をよく知る悪魔はそれを見越したように。
「アリスさん、あの彼に顔を見せてあげて。銃をつきつけられて怯えた表情じゃないのが残念だけど。それでも、彼に“決心”させるにはいい引き金になる」
「………」
口を閉じる姫。そう来たかと、男のやり方には脱帽すらも覚えよう。
姫はクロスにとって大切なもの。その大切さを“よく確認させる”ために顔を見せろという。
軽く息を吐いて、姫は栂に従った。
振り向く、そこにいたのは――なんとも情けない表情をしたクロスの姿。


