* * *
「姫っ!」
始終そのやり取りを見ていたクロスは、飛び出した。
姫が危険だ、助けなければ。そんな純真なる気持ちを持つ男の体を。
「動くな。撃つよ」
栂句琉希は一言で止めた。
姫に向けた銃を軽く動かし強調しながら。動いたらどうなるかを、クロスにイメージさせた。
最悪なイメージを植え付けられたクロスは、動きたくとも動けず。
「お前……!姫をどうするつもりだっ」
歯をかみしめたあとに、叫ぶ。怒りをぶつけたと言ってもいい、クロス最大の怒りだ。
ぶつけられた奴はと言えば、普通なら何かしら――例えば、怯えたり、動くなとあちらも激高したりもするというのに。
「どうするって。君次第で殺すかもしれないね」
何も、変わらなかった。


