「で、君の役柄は?」
「ああ、失礼しました。私の役はアリスです。アリスだからこそ、この城の女王に会いたい」
「それなら案内できるな。一番に通る権利がある役柄だ。――にしても、アリスか」
へえ、と彼女を見る彼の眼差しは、物珍しいというよりは懐かしいといった感じだった。
「何か?」
「と、すまないな。つい、思い出しちゃって。俺もね、前にアリスの役柄を貰っていたんだ」
「アリスの、ですか……」
「そう。“代えがきく舞台”だから、かなりこの世界は歪んでいるんだよ。
誰が何になろうとも構わないし、何にだってなる権利がある。アリスが男だってあり、となるんだ。――まあ、もっとも」
彼の口端が裂けるほど笑っていた。爽やかな笑顔が消え、今あるのは――黒い笑顔。
何かを思い出し、愛し、中毒気味たる顔は妖艶と名がつきそうだった。


