そんな彼女の考えは表に微塵も出ずに、先に作った笑顔を健在させたまま彼女は口を開けた。
「お仕事中、申し訳ありません。私、ビルディと申します。実は、城まで行く道を教えていただきたい」
言えば、そう、と彼は言った。丁寧な物腰は、燕尾服を着るものにぴったりだ。彼女が話す前に土まみれだった手袋を外し、引っ込めるとこを見ると礼儀まであるらしい。
「ここは迷うからね。案内してあげてもいいけど、役柄を教えてもらえないか。部外者を城に通せば俺が怒られちゃうから」
その彼の言葉に、姫は軽く眉をあげた。
「役柄とは。この世界が“何か”をあなたは知っているのですか」
「まあね。寄せ集めの舞台だ。“代えばかりが集まり、有っても無くてもいい下らない世界”。俺はその内の一人。一枚のカードだ。
別の世界から招かれたのか、はたまた別の世界の誰かをモチーフにして俺は作られたのか。記憶が曖昧な一枚のカードが俺」


