話し声、誰かいる。耳をすまして位置を割り出せば、どうやらこの先の曲がり角を曲がったあたりにいるらしい。


『ヤバい奴がいる』


つい先ほど、アダムに言われたことが二人を緊張に追い込んでいた。


引き返すことは出来る。クロスが姫の手を引くが。


「様子見しましょう」


ちょっとだけと、彼女は行ってしまった。


慌てて追うクロス。待っては遅く、姫はもう茂みの隙間から、曲がり角の先にいる人物を見ていた。


仕方がないとクロスもこっそりと覗きこむ。


人物は二人いた。黒い軍服を着た人物。スポーツ選手のゼッケンらしいものが、軍服の背中にくっついていた。


トランプカードを模したゼッケン。一人はハートの5。もう一人は……見られなかった。