(Ⅳ)


バラ迷路はそれほど入り組んだ道ではなかった。


大人ほどの身長はある高い茂み。そこに色とりどりのバラがちらばめてある。さながら壁代わり。バラの茂みが道を作っているのだが。


「あれ、ここも抜かれてますね」


壁(茂み)がなくなっていた。壁がなくなれば道などできず、迷うことはない大っぴらな庭園となってしまう。


茂みがない部分には、つなぎ目がない花壇があり、見ようによってはそれが道を作っていた。


抜かれている数は少ないものの、これでは迷路にならない。


「何ででしょうね、バラを抜くだなんて」


「私たちにしてみれば、楽な話ですよ。――ああ、もうしかしたらそのためにしているのかもしれませんよ」


「ため……?」


「来た人が迷わないために」


「ああ」