泥棒は嘘吐きのはじまり




愛海が後ろ姿になる。
その姿が小さくならないうちに、また俺は靴ひもが緩んでいるのに気がついた。
さっきと同じほう。



「愛海!」



彼女は勢いよく振り向く。なに?どうしたの?
彼女も絞り出したような声、初恋の真逆のような一度泥につけたような声だった。



「俺は、きみのことがすき。きみは俺のこと、すきだった?」



一つ、二つと瞬間は去る。
愛海はタイミングを失って、孤立したオーケストラの一団員のように、固まって動かない。

でも伝わる。

そうね、私もそう思っていたのかもしれない。