「えーじゃ司馬先生をその場に置いて帰っちゃったの?」


「うん。だって何も言ってくれないんだもん」



久美子は知り合いと喫茶店に来て話をしていた。
相手は桜井百合-サクライユリ-(25)
雅也と同じ病院で外科のナースをしている美女。久美子とは大分前から仲が良くて、たまにこうやって会っているのだ。
そして、百合は密かに雅也に想いを寄せている。



「だからか…最近、司馬先生ちょっと変なのよ」


「変って?」


「仕事には影響ないんだけど、たまにボーッと何かを考えていたりして名前を呼んでも、3回目くらいで気付いたり」


「そうなの?」


「気にならないの?好きなんでしょ?司馬先生の事」


「余り押しまくりは良くないし、今は引いてるの。司馬チャンが私の想いに気が付くまで、いつになるか分からないけどね。だからそれまで病院にも行かない」