傘が地面にスライドする。 今日の夕飯だろうか。買い物袋が俺たちの間にいて、少しの隙間ができた。 しかし、俺の首筋に熱い吐息がかかる。 俺の腕は折れていまいそうな腰と、濡れてしまった漆黒の後頭部に回されているわけで…。 首筋でもぞもぞ動き何か言いたそうな様子だった。 それでも力は緩めない。 すると、観念したのか抵抗が弱くなった。 『ごめん。暫く、こうさせて…』 俺のか細い声は、果たしてこの雨に消されることなく、君のもとに届いたのだろうか。