親は仕事があって、先に帰ったので、私は一人で歩き出す。



すると、後ろから声がかかった。



「おい!」



振り返ると、やっぱり村井。



「何ー?」



寒そうに身を縮め、村井は友達と立っていた。



中には田中さんもいる。



なぜがみんな、にやにやと嫌な笑いを浮かべていた。



「一回しか言わないかんな。」


「はい?」



聞き取りにくい。



私は少し、距離を詰めた。



すうっと、村井が息を吸い込む。



「好きだ馬鹿野郎!」



ヒューと口笛が吹かれる。



私はポカンとしてそれを見ていた。



「おい、返事が返ってこないぞ。」


「なんだ悠士、振られたか?」



冷やかされているのを聞いて、ああ、告白なのかと理解する。



今やみんな足を止めて私達を見ていた。



「おいおい、倒れんなよ?」



田中さんがそう一言村井に言い、私のほうに小走りでやってきた。



「返事、してやって?」



温厚な顔が心配そうだ。



私は村井と田中さんを交互に見比べ、



微笑んで村井の方に走り出した。

















Fin.