「なぁ。」



呼ばれて、私は顔を上げた。



「後でノート写させて。」


「え…。」



非難の目で見ると、さすがに気まずそうに身体を動かす。



「だって、俺がとってないとこ消されたんだもん。」


「真面目にとりなよ。」


「無理って何回言えばいいの?」


「知らないよ…。」



後で見せるからそこどいて、と身体を押すと、素直に身体を退けてくれた。



なんか餌があるとサッと動くなぁ。



私は呆れて笑った。



「なっ。」



なんだよ、とでも続けようとしたのか。



何か私の気に障ることを言えば見せてもらえなくなると思ったのか、途中で村井は口をつぐんだ。



そういう頭の回転はいい。



変な人。



止められず、クスクスという笑い声が喉から漏れる。



「なんなんだよ、さっきから。」



結局我慢出来なかったの!?



とうとう肩を揺らして笑ってしまった。



「おい!」


「ううん、なんでもない。」



言いながら笑っているんだから、全く説得力がないだろうな。



村井はプクーと頬を膨らませた。