【短編】中学3年生〜受験と卒業〜

気付け!と目で合図するが、友莉は村井を見ていて気付かない。



この鈍感!と心の中で罵倒する。



どうして、駄目だったという場合を想定しない。



私はほとほと呆れた。



村井はどう反応するか、と身構えると、意外なほどあっさりだった。



「落ちた。」



キラキラと効果音がつきそうな爽やかスマイルを浮かべ。



次の瞬間にはまた机に突っ伏した。



あぁ…馬鹿。



後ろからため息が聞こえた。



振り向くと、田中さんと目が合う。



苦笑して首を傾げられ、私も笑った。



背の高い田中さんは私を通り越して村井がしっかり見えていたらしい。



どうしてこうも鈍感だ、と考えていたが、その疑問は図らずしも解けた。



「そうなの?
残念だったねぇ。」



心底残念そうな声色で。



心配そうな顔で。



友莉は村井の方に身体を傾けて肩に手を置いた。



慰めたかったんだ…。



受かってたら、「おめでとう!」と喜んで。



駄目なら、「大丈夫?私、力になるから元気出して!」と。



わかった瞬間、頭痛がした。



なんて…なんて奴。



こんなことで好感度を上げようと?



驚くを通り越して、唖然とした。