【短編】中学3年生〜受験と卒業〜

「誰ですか?」



村井が困惑しながら手を上げた。



「俺、です。」


「これからは試験管に許可を貰ってからかんでください。」



ええ?



私は一瞬キョトンとした。



多分、いや、みんな同じだろう。



少なくとも、私と村井は。



「は、はぁ。」



なんとも気の抜けた返事をし、村井はそろそろと手を下ろした。



「マジ?」



耳元で囁かれ、私は身を引いた。



「今、話しかけないで。
あんた目ぇつけられたから、話しかけるの休み時間にしたほうがいいよ。」



受験に休み時間なんてものが存在するのかわからないけど。



村井は慄いたようにコクコクと頷き、身体を戻した。



なんか、私立って怖い。



試験管はメガネをかけた若い女の人で、目は釣りあがっている。



これこそ偏見かも知れないが、「試験官」がよりいっそう厳しく見えた。



回答の仕方について説明を受け、その後は沈黙だった。



なんかやだ、この雰囲気。



すごくピリピリしている。



何となく顔が上げづらく、俯いているといきなり試験官が「始め!」と声高に叫んだ。