昼間の風に暖かみを感じ始めた3月下旬。 俺は、香織の部屋に来ていた。 よく考えてみれば、香織に出会って半年ほど経つのに、香織の部屋に入るのは初めてだった。 しばらく酒を飲みながら、出会ってからの思い出話を繰り広げた。 香織は時折バカ笑いをしながら、話を盛り上げていた。 「そやけど……、明日、なんやな」 その時もヒ―ヒ―言いながら笑っていた香織。 だが、少し落ち着いたと思ったら、ポツリとつぶやくようにそう言った。