「こんな夜中に一人で歩いとったら、痴漢にあうでー」 その背中にできるだけ明るく声をかけると、彼は立ち止まり、ゆっくり後ろに振り返った。 「それは香織の方だろ。…今日は彼氏と一緒じゃないのか?」 カズくんが持っていた小さなレジ袋から想像するに、たぶんコンビニ帰りやろな。 チラッと見えたビッグサイズのインスタントラーメンが、カズくんの貧相な一人暮らしを連想させた。