久々に病院に行くことになった。
遥に会えると思うとワクワクしたが少し悲しくなったりもした。
どうせ意識不明だから。


 「久しぶり!遥・・・。」
麻那ちゃんが遥の頬をなでた。
びくともしないでただただ寝ている。
幸せそうに見えた。
あたしは遥の手を握ろうとしてとっさにやめてしまった。
何故か、遥との距離を感じた。
いつのまにこんなに離れちゃったのかな・・・。
遠くから見つめるだけの関係でいいんだ。
あたしたち。
 「もう帰ってもいいかなあ。」
麻那ちゃんは優しく頷いた。
ここにいることが辛くなってしまったあたしを分かってくれたんだと思う。
ドアを閉めてそとにでて歩き出した。
なんてさわやかなんだろうなあ。
とか思っていた。

あたし今幸せなのかなあ・・・。
家族の麻那ちゃん。
彼氏の遥。
友達の時田。
もう何もいらないくらい幸せな環境にはいるのに。
物足りなく感じている。
最低だ・・・。
遥いなくなっちゃいそうなのに。
どうしてこんなに悲しくないの?
悲しいふりはできないよ。あたしには。

家では静かにオルゴールが鳴り響いていた。
 「これ・・・麻那ちゃんのお気に入りの曲・・・」
恋愛バラードでとっても綺麗な歌声だった。
あたしもついつい聞き入ってしまう。

曲を聞きながらこんなことを考えていた。
世の中には生きたくても生きれない人がいる。
今自分がいるこの瞬間がもしかしたら他の人の生きれなかった最後だったかもしれない。