それからあたしは精神的に強くなった。
どんなことにもたえて、あたしからは何もしなかった。
そうしたらいじめる側も飽きたのかあたしから離れていった。
もう何もない。
あたしも生きてる。
死ななくて良かったって本当に思っている。
遥がいたから、今のあたしがいるんだ・・・・。


家に帰ると美羽のお姉ちゃん、麻那ちゃんがいた。
「お帰り!ねえ夏恋料理得意?」
麻那ちゃんはほっぺたに小麦粉をつけながらケーキを作っていた。
 「ううん。あたしじゃダメだよ。」
チラッとキッチンをのぞいて居間に向かった。
 「そっか。じゃあ1人で頑張るわあ。」
手際よく作業している。
・・・・あたしのお姉ちゃん。
忘れちゃいけない。
麻那ちゃんもあたしの大事な人。大事な家族。

 「違うんだよ夏恋!彼氏とかじゃなくてっ。そのお・・・」
美羽は今日一緒に帰れなかった理由を精一杯に説明している。
あたしが思うに「彼氏」なんだけど、違うのかな?
どっちにしても美羽の幸せは祈ってるし、寂しくはないのはちょっとだけだよ?
 「いいよ。正直に言って。」
美羽と正座で向かい合った。
今まで美羽と恋愛関係で話したことはほとんどなかった。
緊張の空気がただよっている。
 「好きな人は・・・いなかったんだよ?」
必死に否定する美羽。あたしはこくりとうなずいた。
 「でもね、告白されて・・・その彼となら上手くいきそうな気がしたから。」
真っ赤な顔の奥に笑みが見える。
美羽の幸せを感じた。
 「付き合ってるんだね。じゃあ、彼氏と楽しくしてね。あたしの事は気にしちゃだめだよ!」
美羽の幸せ・・・。
あたしは何度願ったことか。
神様。神様。美羽を幸せにしてくれてありがとうございます。