話す珠子は穏やかだが、とても悲しげだった


「勝てなかったのね、現実に。園村の家を継ぐという役目を捨てきれなかった柊一朗は、美登里さんと結婚した」


静かな夜に、珠子の柔らかな声が響く


「一葉さんは、そんな柊一朗を怒ることも、責めもしなかった。親友でもあった美登里さんを、罵ったりもしなかった」


そんな一葉と、自分が似ていると、以前美登里に言われたことを思い出した

似ているのだろうか?


「何も言わずに去った一葉さんが妊娠していたことを、わたくしたちは知らなかった」