「ちょ、まずい。」
「宮城だよ、あれ。」
「行こ!」


その声を聞くやいなや、私を囲っていた先輩達はいきなり走り去ってしまった。
残されたのは、正座した私と、恐らく私の頭に落下した、サッカーボール。


「あれ、…あんた、何で正座して…?」
「や、これは……話すと長くなるというか…。」


先輩達の背中を眺めているうちに、ボールを蹴った主がやってきたらしい。
不審そうな声に、答えながら見上げる。


──こ、これは!


見上げた瞬間、目を見開いた。
サッカーのユニフォームに身をつつんだ、いかにもスポーツをしています風の爽やか男子がそこにはいた。


「もしかして、…ボール当たったとか?」
「いえ、当たったは当たったんですけど、」


目の前にしゃがむ、その人の心配そうな顔に、ずきゅん、胸がいぬかれた。


「まじかよ、悪い。大丈夫か?」
「や、あの、ボールが当たって正座したわけではなく、正座していたら、ボールが当たったわけで。」


私の精一杯の説明に、爽やかサッカー男子はクエスチョンマークをたくさん浮かべた表情になる。
そりゃそうだ。
校舎裏で正座している女子高生なんて不気味すぎる。

あはは、笑ってごまかそうと目論むと、元が単純な性格なのだろうか。


「ま、いいや。んなことより、ボールどこに当たった?」


簡単に追求放棄をして、私の心配に戻ってくれた。