花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~


 そんな二人のやりとりを耳にした千歳は、へなへなとその場に座り込む。勘違いなどではなかった。さすがに直接目で見て確認する勇気はなかったが小梅がそれをやってくれたおかげで、その事実は確定された。
 と、同時に。千早の一言がまた、千歳にはショックだった。
『俺のこと、女だと思ってたのかよ』
 口に出す元気は残ってなかった。胸のうちで密かに突っ込む。自分そっくりの千早にまでそんなことを言われてしまうとは……。
 うちひしがれ脱力したまま呆然としている千歳をよそに、
「まあ。まあ……まあ」
 小梅の声は次第に驚きから嬉しさを伴う声に変わっていく。そしてきょとんとしている千早に向かい、満面の笑みを見せた。
「じゃあ、女の子らしくしましょう」
「「え?」」
 同時に声を上げた千早と千歳の見守る中腕時計を確認し、
「まだ、大丈夫ですね……授業が始まるまで時間はあります」
 そう、ぶつぶつと呟きながら部屋の入り口まで戻ると、小梅はそこでくるりと後ろを振り返り、
「ちょっと待ってて下さいね」
 千歳と千早にそう言い残すと、軽い足取りで外へと出て行った。
「…………」
 ――小梅の反応をどう捉えたものか?
 千早が女なのではないかと気付いた瞬間に、千歳は再び眠りにつくことが出来なくなった。どんなに自分に似ているといっても、そんな千早に……気持ち悪いと思う反面、実はどこか他人に思えないものを感じていたといっても。それでも相手が異性である以上、ずっと朝まで一緒に寝るわけにはいかない。