花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~


 どうして――と出かかった言葉を小梅は飲み込み、最終的に視線を千早へと定め、定めたその対象へと近づいた。
「おはようございます。千早さん」
「……うん」
 千歳に無視され困った様子を見せていた千早は、小梅に話し掛けられ、戸惑いがちに小梅を見上げる。そんな千早に小梅はにこりと笑ってみせ、
「ちょっと失礼しますね?」
 そう言うと、パーカーの襟元に人差し指をかけて少し引っ張り、そっと中を覗き込んだ。
 突然接近され服の中を覗かれた千早が、動けずに、目の前にあるさらさらのおかっぱ頭を見ていると、
「……まあ…………」
 そんな小さな呟きと共に小梅が顔を上げ、至近距離で目があった。
 目をぱちぱちとさせる小梅の頬が薄らと赤く染まっている。
「千早さん……女の子だったのですね」
 素肌に直接羽織ったパーカーの中。小梅は確かに見た。そして千歳の言葉の意味を理解した――……そこには、男には無い、こぶりではあるがやわらかなそうな……独特の丸みを持った膨らみがあった。
「……千歳は、違うのか?」
「そうですね。違いますね」