尋ね終わる前に千歳の声に遮られた。何やら焦ったようにも困ったようにも聞こえる声はどことなく普段より弱々しく感じる。昨日の風邪が悪化したのだろうか。それとも他に何か……。
「うん。大丈夫だよ」
「そっか……良かったあ……学校いく前に俺の部屋寄ってくれる? お願い」
心底ホッとしたような声でそう言うと千歳はすぐに電話を切った。やっぱり何か様子がおかしい。ツーツーという音を聞きながらどうしたのかと考えていると、ふと、昨日の事を思い出した。そういえば、千早が一緒に居るはずだ。千早に何かあったのだろうか。
とにかく、とりあえずは急いでいかねばならなくなった。早足でリビングに戻り、残りの朝食を手早く口に運ぶ。
「どうしたんだい? そんなに慌てて」
電話から戻った途端いつになく急いで食べる小梅の慌しい様子に気付き、龍馬が新聞から顔を上げて尋ねてきた。
「ちょっと、用事が出来て早く行くことになりました」
口に残っていたものを、オレンジジュースで流し込みながら早口で答えて小梅は席を立つ。
「そうかい? あまり慌てて事故にあったりしないようにね……あ、そうだ。僕も今日出張に出ることになったんだ。急な講演会がはいってね。マキさんがいるから大丈夫とは思うけど、明日の夜には戻るから気をつけて留守番頼むよ」

