花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~


 皿を並べ終えたマキが促す。マキも藤之宮学院の卒業生である。そのため未だ理事長という呼び癖が抜けない。
「そうですね」
 小梅も慣れた様子で頷きフォークを取る。
「いただきます。マキさん」
「はいよ」
 小梅が言うと、ハスキーな声でにまっと笑顔を返してきた。少し高めの身長でスレンダーな体型。非常に美人だったりするのだが、さばさばとした性格や物言いがそれを嫌味に見せない。良く気が利いて、面倒見もいいマキは姉御肌という言葉が良く似合う。ひそかに小梅は憧れていたりするが、決して自分がなれないタイプであることも重々承知している。あまりにも対照的な二人ではあるが、だからこそいいのだと思う。相性のよさは歴代のお手伝いさんのなかでもピカイチだ。
「そんじゃ、頑張ってお掃除しますかね」
 小梅がフォークを手にしたのを確認するとマキはそう言って鼻歌混じりにリビングを出て廊下へと出て行く。それを聞きながらもう片方の手にとったナイフをオムレツに入れると、切れ目から程よい半熟加減の艶のある黄色と、とろけるチーズの香りが溢れてくる。
「おはよう小梅」