一瞬足を止めて大きく身震いして、だが、すぐ気を取り直してゴミ捨て場に向かう。
心当たりはあるといえばある。昨日びしょ濡れになって、身体を拭こうとしたけれどその後の騒動でバタバタしてしまった為に、結局濡れたまま掃除して帰った。あれがいけなかったのだろう。
校舎の手前で、その裏側へ続く細い道へと曲がる。
週に二回専門業者が引き取りにくる学園専用のゴミ置き場は、校舎の裏口そばにある。
そこに寄ってゴミを捨ててそのまま真っ直ぐ、校舎と並んで立つ体育館を更に通り過ぎた隅の隅のほう……学園の敷地をぐるりと囲むフェンス沿いに植えられた木立に埋もれるようにしてひっそりと立つ我が家へ向かうのがいつものコースだ。
もうすぐゴミ捨て場というところまで差し掛かったところで、前方からこちらへ歩いてくる気配を感じて千歳は顔を上げた。
「あれー? 千歳っち。まだ働いてたの?」
見れば、首からタオルをひっさげたジャージ姿の綾人が大きく手を振っている。
「何やってんだ?」
なんとなく今一番会いたくない気分の相手に出くわしてしまったが、綾人はゴミ捨て場の前にいるので避けていくわけにもいかず、声をかける。
「見てのとおり部活帰り。こう見えてもバスケ部のエースだからね俺。結構真面目に練習やってんのよ」
そのままゴミ捨て場の前で足を止めた綾人はにこにこと上機嫌な顔で答えた。
「今から部室に荷物取りにいくとこだったんだ。それにしても、もうとっくに帰ってたと思ってたぜ」
「悪いかよ。こっちも今ようやく終わったとこだ」
綾人の前まで来て千歳は憮然とその顔を見上げる。
「なんでー? 俺は千歳っちと会えて嬉しいさー。今日ゴミ多かったのか? さっきも来てたろ?」
「は?」

