「絶対俺じゃねえ」
少しばかり不思議な感じはするものの、きっちりと千歳は否定した。
「まあまあ……世の中にはそっくりな人が三人はいると言いますし。多分似てる人だったんですよ。ね。」
どちらもひかないために険悪になりかけた空気を小梅がうまく和らげてくれる。
「うん。きっとそうだね」
まあ、所詮綾人の言うことだし。
この際それが嘘だろうがなんでもどうでも良くなってきたので、千歳は笑顔で小梅に頷いて見せた。
「……ほんっと。俺にだけ冷たいのね。千歳っち……」
それを見ていた綾人が苦笑しながら呟く。
そう思うのなら自分がお邪魔虫だといい加減気が付いてもよかろうに……そう思いながら千歳は腕時計に視線を落とす。
昼休みが終わるまでまだ少しばかり時間がある。
弁当包みを片付け終えた小梅はフェンスに背を預けて持参してきた参考書を開こうとしている。
常に成績がいいのに小梅は努力を怠らない。邪魔をしないようにその横に寝そべり千歳は目を閉じた。
今日も放課後は仕事が待っている。少しでも体力を蓄えておかなくては……
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「で、何やっているんです?」
放課後、校門の清掃と花壇の草取り後いつものように研究所へ向かった千歳は、所長室へ入るなり眉根を寄せた。

