「いや~。小梅ちゃん腕上げたよね~。うまかった~……ごち!」
ごく一名。何の関係もなくあたりまえのようにそのおこぼれに預かっている存在が、少々気に食わなくは思うけれど……
「で? お前は何をしてる」
不意に膝にのしかかる重みに眉を吊り上げ見下ろせば、爪楊枝を口の端に挟んだ綾人と目が合う。
自分より背の高い綾人の顔が膝元にあるという状況。
不快さこのうえない状況は直ちに打開するべく、膝枕と化していた自分の太ももを勢い良くずらすと、ごん、と小気味のいい音がして綾人の頭はコンクリの床にそのまま直下した。
「いてててて。千歳っち冷たい~」
打ち付けた後頭部をさすりながら仕方なく起き上がる綾人が文句を言うが効かない振りをして、小梅が弁当箱をしまうのを手伝う。
「いや、ほんと千歳っち俺には冷たいもんね。いや、そのクールビューティーなところがまたそそるんだけど」
「気持ち悪いし」
おかしな台詞はさっさと斬り捨てるに限る。
「ふふ……本当に仲が良いですね~」
やりとりを眺めていた小梅が歌うように言う。
「いや、小梅、それはちょっと違うと思うけれど」
元来平和主義で少しばかり天然な小梅にはこの状況が仲良く見えるのか?
小梅のことは大好きだし、小梅の言うことになら何でも頷いてやりたいところだが、こればっかりはちょっと素直には頷けない。
「や~、小梅ちゃん。俺の方は凄く親近感溢れてるんだけどねえ、ほんと冷たいのよ。昨日だって夜コンビニいったら店の前で偶然千歳っちとばったり会ったんだけどね。もう、ものの見事に無視。振り向いたくせに全く知らないよな顔してすぐどっか行っちゃったんだよ~」
「は? 何言ってるおい?」

