一気に怒りをそがれ、千歳は溜息混じりに肩の力を抜いた。
「小梅。めっちゃ心配してるんだぞ。電話くらいでろよ」
「……うん」
「俺だってどんだけ探したと……」
「知ってる」
「あ~……そうだろうな。そんだけ見晴らしいいとこいたんならな」
「…………ごめん」
「……ったく、やっぱり近くにいたんじゃねえか。木の上なんて……誰が思うかよ」
むすっとして千早を睨むと、
「行くぞ」
力なくただぶら下がっていた腕の片方を掴む。
「え?」
戸惑ったように上がった千早の声は無視する。
「小梅と綾人が待ってる。もうすぐ理事長が戻る時間だ……行くぞ」
強引にその腕を引いて、歩き出そうとしたのだが――
「もう……いいよ」
千早は動こうとせず、ぽつりとそう漏らした。
「は? 今更何言って……」
「いいんだ。聞かなくてもわかってる!」
声を荒げて千早が千歳の言葉を遮った。眉根を寄せて振り返ると、表情を固く凍りつかせたまま、ただただ視線だけをまっすぐにぶつけてくる千早と目があった。

