花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~


「どこにいるんだよ」
 多分、校内のどこかにいる。知らない場所に積極的に出て行く方ではない。強がりなわりに小心者なのだ。自らのテリトリーの中にいてようやく自分を保てる。そこから出れば足元すらおぼつかなくなるくらい不安になってしまうほど本当は気弱なのだ。
 千歳が綾人や理事長に強気でいられるのは自分のフィールド内だからこそ。そして小梅という支えになる絶対的な存在があるからこそだ。それらを持たないならば、本来の自分は臆病で脆弱な存在でしかないと千歳は自覚している。
 ならば、今の千早はどうだろう。
 千歳とそっくりで……けれど、絶対的支えを持たない千早の心は今、一体どんな状況だろう。
 とんでもない事実を受け入れねばならないかもしれない今、独りで姿を消してしまった千早は、きっと唯一知るこのフィールド内からは出られない。
 そこから出てしまえば、僅かな支えすら失ってしまう。心を保てない。
『……心……ね』
 千早に関する仮定と心という言葉はいまいち結びつきにくい。けれど、千早は確かに持っている……でなければ、説明がつかない。
 出会ってから見せた千早の顔を思い浮かべながら校内を探し回る。ひとくちに学校といっても、歴史もある有名私立学園。その敷地の広さは他の学校よりも随分と広い。部室や、その他、色々な学科ごとに充実した施設が用意されていることも、この学園が人気校である理由の一つだ。