花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~


 平気そうに見えた。あるがままを受け入れているように見えた。けれど、それが嘘だったとしたら――
『やっぱり、平気なんかじゃなかったんじゃないか』
 昨夜の様子。一転した今日の態度。それを思い返すと、そう思えてならない。だとしたら、研究室には千早は行っていない。それ以外のどこかということになる。
 千歳達と一緒に行動するようになる以前。千早はどうしていた。ゴミ捨て場で目を覚まし、部室で制服を拝借……その後は朦朧とした状態で彷徨っていたという。その間に千早が目撃された場所は、近所のコンビニ、体育館裏、校門の前、そして小梅の家の前。いずれもこの近辺ばかりで……普段の千歳の行動範囲内。
 無意識な状態で千歳と行動をトレースしていた?
 それはやはり、千歳と千早には繋がる何かがあるからではないだろうか?
 千早が本当にゴーレムだったとして、理事長が何を目的に作り、何故それが千歳とそっくりなのかはわからない。けれど本当に似ているのだ。容姿も行動パターンも、本当に細かいところまで。ならば、その思考も……。
「あの馬鹿」
 些細なことまで真面目に受け止めて悶々としてしまうのが千歳だ。綾人のように馬鹿みたく前向きになれたらと時に思うほどに。だったら、千早もきっとそうなのだ。
 平気なわけがない。けれど、それを周囲に見せようとはしない。それが、ささやかな強がりだと……千歳にはわかりすぎるほどにわかってしまうから。