それは違う――と、千歳は思う。理由や根拠なんてないが、ただ、そうじゃないと思った。なんとなく散歩に出たとか、そういうのではない。
千歳達以外に誰も知らない、ここ以外のことを良く知らない千早が、自分達との約束があるにもかかわらず、姿を消す意味。行くあても頼るべき知り合いもいない千早がその時間帯に此処にいない意味。
今の千早にとって最も重大なことの為の約束であるのに。
『あえて、出かけた』
そう、直感のようなものがあった。何を思ってなのかはわからないが、千早は自分達との約束をあえて無視した。何故?
「とりあえず、探さないとな。迷子になってるかもしれないし」
「そうだね……うーん。電話も……でないです。聞こえないのかな」
携帯を耳に当てたまま小梅が答える。千早に千歳の携帯を持たせていることを朝言ってある。それを思い出して連絡をとろうとしてくれたらしい。
「そか。んー……じゃあ、小梅はこのまま此処で待っててくれる? もしかすると入れ替わりで帰ってくるかもしれないし。後で綾人も来るだろうから……とりあえず、俺、その辺探してくる」
「うん。小梅も少し時間空けてまた電話鳴らしてみる」
「ああ。頼む。俺は探しながらちょくちょく様子見にこっちに戻ってくるから」
こくりと頷く小梅に手を振って千歳は外に出た。しかし、探すといってもどこから探したものか……千早の行きそうな場所を考える。
本来の流れなら、この後、皆で行くはずだった研究室。
けれど、約束を無視して姿を消したところを見ると、千早は……そこに、行きたくなかったのではないだろうか。

