花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~


「千早さん。みんなついていきますから何も心配しないで大丈夫ですからね」
 勇気付けるように背中を軽く叩かれながら
「うん。わかった小梅」
 にこりと笑顔で返す千早。不安なんて微塵も無い。まるでちょっとどこかに出掛けるかのような軽い返事。
「よし。じゃあ予定も決まったことだし食べようぜ~」
 綾人の声を合図にめいめいバスケットに手を伸ばす。風呂敷に包んであったが、中身はバスケット。今日は色々な具材が目にも鮮やかなサンドイッチだ。
 手の平ほどのサイズにカットされた一切れを、一口齧り、頬を緩ませる。おいしそうに昼食を楽しむ千早を見ながら、やはり自分が勝手に気を揉んでいただけなのかもしれないと千歳は思った。千早は自分が思うよりもずっと冷静で、平気なのかもしれない。ただ単純に、事実を受け止め受け入れようとしている……今、この場にこうして皆といる状況を受け入れているように。
 そう思い直し、手にしたサンドイッチを一息に口に詰め込んだ。小梅のサンドイッチは絶品なのだ、ぼやぼやしていると、綾人と千早に全部食べ尽くされてしまう。
「ちょ、おまえ。もうちょっと遠慮しろよ」
「ええ~? だって俺育ち盛りだし~」
「もう充分成長してるだろうが」
 綾人にストップをかける千歳。それを見て小梅がふふ、と笑みを漏らし、千早がきょとんとした後、小さく吹き出した。
 賑やかな昼食。いつもの空気。ひとり加わって、少しだけ賑やかさが増した。
 穏やかで、平凡な昼休み。