花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~


 あまり期待してはいなかったが、いつになく真面目に働いた綾人の捜査結果がこれとなると、やはり千早は近隣に存在する誰かではないと思って間違いない。
 教室のドアが開き担任が入ってきて、綾人が慌てて自分の席へと戻る。
『やっぱり……ゴーレムなのか?』
 ホームルームが終わって授業が始まってもずっとそのことが頭を離れず、ぼんやりとしながらかろうじてペン先だけを動かしていた。
『あいつ、どうするのかな』
 どことなく淀む気持ちと裏腹に、青々と能天気に冴え渡る空をのんびり移動する雲を見ているうちに午前の授業は終わってしまい、風呂敷包み片手に迎えに来た小梅と合流してプレハブへ向かう。
「ちーちゃん、どうかした?」
「え?」
「なにか……考え込んでる?」
 小梅に言われてずっと自分が黙り込んでいたことに気がつき、いけない、と意識を覚醒させる。自分がああだこうだと気を揉んだところで、どうだというのだ。これは千早の問題であって自分のことではないのだと。
『俺には関係ないことだろ』
 胸のうちで呟き、淀みを払拭する。
「ん~、まだ風邪治ってないのかも。ちょっとぼーっとしてた」
 小梅にそう言い訳しながら、でも平気だと、笑顔を作って見せた。
「大丈夫?」
「うん」
「俺がおぶっていってやろうか?」
「いらねえし」