この部屋にはTVもないし、雑誌をはじめ、およそ娯楽と呼べる類のものは置いてはいない。普段学校とバイト、帰ってから風呂や食事、宿題なんかをして夜の見回りなんかをするだけで一日が終わってしまう千歳にとっては、あってもそんなものを楽しむ余裕はないし、基本無駄遣いは厳禁なので不要のものなのだ。だから起きていても特にすることはないはずだが、一応尋ねてみる。
「かまわない」
枕の中からくぐもった返事が返ってきたのを確認して消灯すると、千歳はベッドにもぐりこんで目を閉じた。暗闇と共に増した静寂は、かすかな息遣いまで鮮明に耳に反響させる。ほんの少し下の方、そう離れていない距離から聞こえるかすかな衣擦れの音も勿論のこと。千早もどうやら横になったらしい。
そんな気配を感じつつ、やはり無理にでも小梅の家に行かせればよかったと、千歳は僅かだが後悔しはじめていた。
相手は千早。自分と同じ顔をした、多分……ゴーレムだ。
そもそも、千歳には小梅という心に決めた想い人がいる。それでもやはり……この状況はイマイチ心臓に悪い。収まったはずの動悸が再び高鳴り始めるのを感じて、それが千早に聞こえないよう、早くそれをおさめようと、毛布を深く被り体にきつく巻きつけ背を丸める。ごそごそしていると、
「小梅は、やさしいな」
ふと、呟くように漏れた千早の声が聞こえて、千歳は動きを止めた。
「綾人は面白い。そして千歳は…………」

