膝を抱えていじけていた綾人の瞳が途端、きらきらと輝きだす。嫌な予感がした――が避けるより早く綾人が目の前で大手を広げていた。
「千歳っち~!!」
「うわっ!! ……ぐうっ……」
思い切り正面から激しく抱きつかれて息が詰まる。必死で逃れようと思えど、かなりがっつりと捕まってしまった。
「離せっ……馬鹿! 苦し……」
「やだね~。こんなチャンス滅多にないもんね~」
「ばっ……頬擦りなんかすんな! やめろ。やめろって!!」
もがく千歳に機嫌よく頭を擦り付ける綾人。
「あはは……おかしな奴だな。綾人は……」
千早が声をたてて笑ってた。千歳と綾人を眺めて。
肩を揺すって笑っていた。
だけど今度は本当に楽しそうだったので……千歳はその笑顔に苛立ちは覚えなかった。
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「じゃあ、行こうか千早さん」
終業のベルが鳴ってしばらく経った頃――
千歳のプレハブの前には小梅が千早を迎えに来ていた。
昼休み終わり間近、とりあえず明日理事長が戻るまで千早をどうするかという話になった。千歳は正直今夜はゆっくり眠りたいと思っていたし、女の子だとわかった以上、勿論綾人の所に泊めるわけにはいかない。逆に小梅の家なら問題ないと話は落ち着き、千早も縦に首を振ったのだったが……。

