あの時も、そうだった。いつだって小梅は変わらない。
両親を千歳が亡くした時も、腫れ物を扱うように接して距離をとる周りの中、小梅だけがかわらずそばにいて、自分に触れてくれた。
大丈夫。大丈夫だよ……ちーちゃん。
呪文のように繰り返されるただ一つの言葉。だけど、それだけで良かった。そばにいて、そう言ってくれるだけで、変わらない笑顔を見せてくれるだけで……充分だったんだ。
自分が守るつもりでずっと側に居たけれど、その小さな手の平に、その存在に、ずっと助けられてきたのは千歳のほうだ。だから、ずっと一緒にいたいと思う。だから、千歳にとっては小梅が全て――
「あ~……駄目だ。俺、全然成長してねえ」
自分の情けなさに溜息をつきながら振り返れば、小梅がいつもの笑顔で迎えてくれた。
「戻ろう、ちーちゃん。大丈夫……千早さんはちーちゃんなんだから……きっと怒ったほんとの気持ち、ちゃんとわかってるよ」
「……うん」
手をひかれ、大人しく小梅に連れられ部屋に戻る。引き戸を開けると、テーブルを囲んで座ったまま二人が戻るのを待っていた千早と綾人の視線がいっせいにむけられる。
「な。千早っち。小梅ちゃんに任せとけば平気って言ったろ?」
にやにやと綾人が千早に耳打ちする。ひそひそ声のつもりなのだろうが丸聞こえだ。いつもだったらカチンとくるところだが、千早を安心させようと言い聞かせてくれたのが想像できるだけに何も言えない。

