顔が歪んでいるのが自分でわかるから、小梅のほうは振り返れない。小梅も無理に千歳の前にこようとはせず、じっと後ろで立っている。
「平気なわけ……ないくせに」
苛々の原因に、口に出して初めて千歳自身気が付いた。そうだ。違和感……千早の反応には違和感がありすぎる。あんまりにも澄んだ笑顔だったから、余計に作り物みたいに見えたんだ。だから、苛々した。
「……ちーちゃんは、優しいね」
「違う。そんなんじゃない。ただ……あれは嘘だ。あんな態度って……違うだろ? 根拠なんて無い……だけど違うってわかるんだ……だって、あいつは俺に似てて……あいつも最初は自分のこと俺だって思ってて……だから……だから……」
千早は千歳じゃないし、ドッペルゲンガーでもない……分身なんかじゃなくて全くの別人だ。千歳と違って女だし、人どころかゴーレムなのだ。でも、それでも――
「そうだね。千早さんは、ちーちゃんだもの」
上手く説明できなかった言葉。理屈にも合わないし、筋も通らないし、事実でもない言葉。それでも、小梅はそんな千歳の気持ちをそのまま言葉にしてくれた。
一気に、気持ちが緩む。
「……小梅……俺……変かな?」
「大丈夫。変じゃないよ」
小さな手が背中を撫でてくれるのがわかった。やわらかな……小さな手の平。刺々しくささくれていた気持ちが丸くなっていく。
「大丈夫……大丈夫……」

