花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~


 千早の笑顔で自然と和んだ空気の中、何故か千歳は低く呟いていた。
 苛々する。
 自分でも理解しようの無い刺々しい気持ちが千歳の中で膨れ上がっていた。
「ほんとにそれでいいのかよ!」
 何でこんなことを口走っているのだろう。一人怒ったように言い放った千歳の声に、三人がきょとんとした表情で千歳を見上げた。
「……っ!」
 その視線に耐え切れず、思わず千歳は立ち上がり、部屋から飛び出す。
「ちーちゃん!?」
 プレハブから飛び出したものの、木立を抜けようとして校庭から聞こえてきた賑やかなざわめきにハッとする。昼休み時で校庭には球技に興じる者や、木陰で談話を楽しむ者が溢れている。そんな中に飛び出していく気分ではない。
 行き場を失い、記念樹のひとつに手をかけ足を止めた千歳の背に、軽い足音が追いついてきた。
「どうしたの? ちーちゃん」
 聞こえる声に観念する。追ってきたのは小梅だ。追いつかれてしまった以上無視などできはしない。
「……苛々……したんだ」
「どうして?」
 責めるふうではない。走ってきたせいで少し乱れてはいるが、いつも話す時と変わらないトーンの声に、自然と言葉が溢れてきた。
「だって……おかしいだろ? あいつ……昨日、あんだけ泣いたのに……自分が千歳じゃないってわかっただけで泣いたくせに……ゴーレムかもしれないって話になって、なんで笑えるんだよ」