「千早も……綾人も……ありがとう。わたしのために……色々協力してくれて、嬉しかった。多分……みんなが予想している通りで、その本に書いてあることが本当なんだ。わたしは……」
「いや、まだ確定ってわけじゃ……理事長にも確かめてみないとわかんないし……」
「いいよ千歳。確かめても、多分答えは変わらない。不思議なんだ、小梅がその本を読んでるのを聞いてる時に……背中の痣が疼いたんだ。まるで、それが本当なんだっていうみたいに……そして、わたしも納得した。そうなんだと思った。体が、そうなんだって……理解したんだ」
落ち着き払った様子で千早はゆっくりとそう言った。本当に、納得がいったというように……穏やかな表情で……。
「すっきりしたんだ。目が醒めてからずっと、落ち着かなかった。自分が誰なのか、なんなのか……どうしてここに居るのか何も分らなくて。わけもなく、不安だったんだ。だけど、今はわかる。何故作られたかはわからないけど、誰かが必要としてわたしは作られてここに居る。そして、わたしはゴーレムだ」
そこまで言って、千早は小梅に向かいニコリと笑いかけた。
「名前も、小梅にもらった。わたしは……千早だ。これだけわかれば、充分だ。何も分らないより、ずっといい」
花のような笑顔。
小梅のように邪気の無い……心底淀みの無い笑顔。
だけど――
「……いいのかよ」

