「……あの痣のことか?」
千歳が呟くと、小梅は小さく頷いた。
「……多分……それで、そのエメトの文字の頭文字を消してしまったりすると、文字の意味が『死』に変わってしまって呪術的効果も変換されてしまい、ゴーレムから命が抜け出てしまうと書いてあります。この本……どこから……」
「理事長の……研究室だ」
問い掛ける小梅に答えながら、千歳は深く長い息を吐いた。
つじつまが、あってしまう――
千早が目覚めたという日。千歳が試験管を割ってしまった日にテーブルに置かれていた魔術書が開かれていたページに書いてあったのは、ゴーレムの作り方。開いてあったのは勿論作ろうとしていたからで、割れた試験管は燃え上がった。
多分、中身はこれに書いてある内容のものだ。人形らしきものは見た記憶がないが、理事長は試験管の行方を聞いたときに他にもなくなったものがあると言っていた。
人形は小さくてもかまわないとあるから、ごく小さなものだったのかもしれないし、試験管が燃えたときに一緒に燃えたか、片付ける時に気付かずに一緒に捨ててしまったのかもしれない。
そして千早の背中にはエメトと書かれた本の文字とそっくりの痣があって、ゴーレムの体にも同じようにエメトの文字があるという。
状況が、あまりにも当てはまってしまう。
仮に千早がゴーレムだとすると、理事長が作ったものが何故千歳の姿をしているのかが気になるところではあるが……。

